塗り薬
有効成分(抗コリン薬)を塗ることで汗を出す司令を受ける部分をブロックし、汗を抑えます。
飲み薬
有効成分(臭化プロパンテリン)を服用することで、汗を出す指令を抑え、汗の量を減らします。
注射
ボツリヌストキシン(ボツリヌス菌が作り出すタンパク質)を注射することで、汗を出す指令を抑えて、汗の量を減らします。
治療器
汗腺に熱ダメージを与えることで、汗腺の機能を停止させ、汗の量を減らします。
手術
皮膚を切開して汗腺を取り除くことで、汗の量を減らします。
塗り薬 | 飲み薬 | 注射 | 治療器 | 手術 | |
---|---|---|---|---|---|
効果 | 汗を抑える | 汗を抑える | 汗を抑える | ワキ汗の量を減らす | ワキ汗・におい (ワキガ)を抑える |
持続期間 (目安) |
やめると 再発 |
やめると 再発 |
3~9ヶ月 | 長期的 | 半永久 |
治療回数 (目安) |
毎日1回塗る | 毎日、1錠を1日に3~4回 | 1年に 1~2回 |
多くの場合は1回 | 基本的に1回 |
副作用・ ダウンタイム |
皮膚炎やかゆみ・赤みのほか、口の渇き、尿が出にくい、視界がぼやける、光をまぶしく感じるなど | 眠気や口の渇きなど | 一時的な腫れや赤み | 腫れや赤みが出るが 1週間ほどでおさまる |
1週間ほど包帯で固定するなど、約2~3週間は日常生活が制限される。傷口が目立たなくなるまで数ヶ月かかる。 |
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人の皮膚には、汗をつくって皮膚の表面へ送り出す汗腺という管があります。汗腺は、皮膚の表面から約1~3mmの深い部分(真皮深層から皮下組織)にかけて存在し、根本は脂肪組織に囲まれています。
「汗腺」には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があり、役割や存在する部位が違います。エクリン汗腺では体温調整のために汗を出し、アポクリン汗腺では哺乳類の独特のフェロモンのようなものを出す役割があります。汗には、手足をしっとりさせ、すべり止めの役割があり、保湿効果もあると考えられています。
暑い時や入浴後、激しい運動の後など、体温が上昇した時にかく「温熱性発汗」、緊張・興奮・不安・精神的ストレス・恐怖・驚きなどの精神的刺激が原因の「精神性発汗」、辛いものを食べた時にかく「味覚性発汗」の3種類です。
エクリン汗腺は全身にありますが、特に手のひら、足の裏、ワキの下に多く存在します。一方、アポクリン汗腺は、ワキの下、耳の中、乳輪、外陰部に多く存在します。また、唇などのように汗腺がない部位もあります。
エクリン汗腺・アポクリン汗腺どちらから出る汗も、最初は無臭ですが、皮膚表面の常在菌によって分解されることでにおいが発生します。特に、アポクリン汗腺から出る汗は、脂肪が多く含まれていて、細菌によって酸化すると脂肪酸に分解され、独特なにおいの原因になります。
ワキ汗が多く出る病気のことを「腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」といいます。腋窩(えきか)とは、ワキの下のこと。ワキの下はもともと汗腺が多いうえに、緊張やストレスなどの精神的な刺激と、気候や運動による温熱刺激の両方で発汗が促進されるため、汗を多くかきやすい部位です。
体質で汗が多いという人はいますが、ワキ汗で人目が気になるなど、日常生活で困るほど汗が出る場合は、『多汗症』という病気が考えられます。多汗症の症状があらわれやすいのは、手のひらや足の裏、ワキの下、額など、汗腺が密集している部位です。 多汗症に悩む人は、思春期から中年世代までの社会的活動が盛んな年代に多いといわれています。男女の比率はほぼ同等とされていますが、日本国内の調査では男性患者のほうがやや多いと報告されています*。
*FUJIMOTO, Tomoko; KAWAHARA, Kazuo; YOKOZEKI, Hiroo. Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan: From questionnaire analysis. The Journal of dermatology, 2013, 40.11: 886-890.
多汗症は、主に、明らかな原因が存在しない「原発性多汗症」と、何らかの病気や使用している薬が原因となる「続発性多汗症」に分けられます。続発性多汗症は、原因となる病気を先に治療する必要があります。
局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま、6ヶ月以上認められ、以下の6症状のうち、2項目以上あてはまる場合を多汗症と診断します。
これらの2項目以上を満たす症例や幼少児例では、家族からの指摘などを参考にして、それぞれ発汗検査を行って診断を確定します。
自覚症状により、以下のいずれに該当するかを判断してもらい、③および④を重症の指標とします。
「原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版」より抜粋