監修:山下 理絵 先生
湘南藤沢形成外科クリニックR 総院長
/ 形成外科専門医
シミの原因
紫外線を浴びる、肌をこするなどの刺激によって、皮膚内部にあるメラノサイトという細胞が活性化し、シミのもととなるメラニンが過剰に作られます。通常であれば、肌のターンオーバー※によって、メラニンは皮膚表面に押し出されて、垢(あか)と一緒にはがれ落ちますが、ターンオーバーが乱れると、メラニンは外に排出されず、皮膚内部に蓄積されて、他の部位よりも色が濃く見えてしまいます。これが、一般的にシミと呼ばれるものです。
※皮膚の新陳代謝。皮膚内部で新しい細胞が誕生し、古い細胞が排出されるサイクルをいいます。このサイクルは、年齢を重ねるごとに、周期が乱れ、遅くなっていきます。
くすみの原因
くすみとは、明るさやツヤが失われ、肌の色が暗く、くすんで見える状態をいいます。
くすみの原因はさまざまですが、主に、乾燥、血行不良、ターンオーバーの乱れや、栄養の偏った食生活、睡眠不足、紫外線によるものなどがあります。
血行不良により、肌が暗く見えてしまったり、体中の細胞に十分な酸素や栄養が行き届かなくなることで、肌のターンオーバーが遅くなり、はがれ落ちるはずの角質細胞(垢)が肌に残ってしまいます。この残った古い角質細胞は厚い層となり、メラニンを含んで黒っぽい色をしているため、肌を暗く見せる原因に…。
スマホのブルーライトによって、睡眠の質が低下するともいわれています。ターンオーバーが正常に行われるためにも、寝る直前までスマホを使用するのは、要注意ですよ!
シミには、加齢に伴って出てくる老人性色素斑や、目の周辺以外の頬、額、口の周りに左右対称にあらわれる肝斑、鼻を中心に左右対称に小さいシミが散在する雀卵斑(そばかす)、傷やかぶれなど炎症が起きた部位にできる炎症後色素沈着、シミの中でも真皮にできるADMなど、いろいろな種類があります。シミの種類によっては、スキンケアでシミを見えにくくするものや、レーザー治療が適応になるものなど、それぞれ対処法が異なります。
まずは、自分のシミがどのタイプのものなのか、診察してもらうことをおすすめします。
ことば辞典でもっと知る ADM 炎症後色素沈着 肝斑 角質 ターンオーバー メラニン メラノサイト
主な治療法一覧
痛みやダウンタイム、治療頻度は、お肌の状態により個人差があります。診察の際に、担当医に確認されることをお勧めします。本WEBサイトでの表現は、あくまで一般的な目安です。また、状態が良くなっても、定期的に受診してメンテナンスをすることで、良い状態を継続することができます。
医療機関専売化粧品
費用 | 痛み | ||
---|---|---|---|
ダウンタイム | 使用頻度 | 毎日のスキンケアに |
医療機関のみで販売している医療機関専売化粧品は、市販の化粧品に比べ、肌への有効成分が高濃度なため、より早く肌の変化を実感することができます。医師の診察のもと、肌の状態に合った化粧品を選ぶことができます。
シミに有効な美白※成分として、ビタミンC誘導体や、トラネキサム酸、ハイドロキノンなどが挙げられます。
いずれの成分も、シミやそばかすの原因となるメラニンを生成する酵素(チロシナーゼ)を抑える働きがあります。
ビタミンC誘導体は、ビタミンC(アスコルビン酸)は、抗酸化力(酸化を抑える力)が非常に高い成分です。ビタミンCの効果を維持しながら、肌に浸透しやすくしたものをビタミンC誘導体といいます。
トラネキサム酸は、「メラノサイトの活性化を抑制する」「肌荒れを抑制する」という2つの作用があります。喉の腫れや口内炎の治療薬や歯磨き粉など、幅広く使われている成分です。
ハイドロキノンは、シミの原因であるメラニン色素の合成を阻止する働きがあり、その美白※効果はコウジ酸やアルブチンの数10倍~100倍といわれています。
これらの成分を配合した医療機関専売化粧品をスキンケアに取り入れることで、肌を整え、若々しい肌を持続することができます。
ただし、成分の特性上、肌の状態によっては、赤みが生じることがあります。心配な方は、医師にご相談ください。
また、くすみは、「角質ケア」と「乾燥を防ぐ」ことが大切です。
角質層が厚いとせっかくの成分が行き届かないので、古い角質を除去する角質剥離作用(ピーリング作用)のあるAHA配合の化粧品などを取り入れることもおすすめです。
さらに、化粧水やクリーム、乳液を組み合わせて、肌(肌の表面にある角質層)に水分をたっぷりと与え、しっかりと保湿しましょう。
※美白とは、「メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぐ。」こと
各製品の詳細は、製品名をクリック(タップ)でご確認いただけます。 ※化粧品のWEBサイトに遷移します。
飲み薬・塗り薬
費用 | 痛み | ||
---|---|---|---|
ダウンタイム | 治療頻度 | 毎日 最低でも1ヶ月間 |
シミ、特に肝斑※には、メラニンをつくるメラノサイトの活性化を抑えるトラネキサム酸やメラニン生成を抑えるビタミンCなどの内服薬の処方があります。
※左右対称に、目のまわりを避けてできるシミ。30~40代の女性に多くみられます。
また、外用薬としては、美白効果の高いハイドロキノンや、メラニン生成を抑えるビタミンC誘導体、肌のターンオーバーを早めるトレチノイン(ビタミンA誘導体)などの成分を配合したものがあります。
ハイドロキノン:人によっては、刺激を感じたり、赤みが出ることがあります。
ビタミンC誘導体:肌の状態によっては、しみたり、乾燥、赤みが出ることがあります。
トレチノイン:かゆみ、赤み、熱感、皮むけが起こることがあります。
イオン導入・エレクトロポレーション
費用 | 痛み | ||
---|---|---|---|
ダウンタイム | 治療頻度 | イオン導入:週に1回 エレクトロポレーション:2~4週間に1回 |
イオン導入とは、皮膚に微弱な電流を流すことによって、直接塗るだけでは浸透しにくい水溶性の美容成分を肌の深部まで効率よく導入することができる治療です。
粒子の小さいビタミンC誘導体やプラセンタなどを導入するのに適しています。
エレクトロポレーション(電気穿孔法)とは、電気の力を利用して、効率よく美容成分を肌の深部に浸透させる治療です。特殊な電気パルスで一時的に皮膚に小さな穴を開け、その穴に美容成分を入れて、浸透させます。
ビタミンC誘導体やプラセンタのほかにも、イオン導入では難しい粒子の大きいヒアルロン酸なども導入することができます。
光治療(IPL)
費用 | 痛み | ||
---|---|---|---|
ダウンタイム | 治療頻度 | 3~4週間に1回 |
光治療とは、IPL(Intense Pulsed Light)と呼ばれる幅広い波長を持つ、マイルドな光を使用した治療です。
光治療のメカニズム
シミ・そばかすの原因であるメラニン色素に、光エネルギーが吸収され、熱に変わります。
熱ダメージを受けたメラニンは、肌のターンオーバーにより、皮膚表面に押し出されて、自然に外へ排出されます。
治療の経過
IPL(光)を照射すると、照射直後は、一時的にシミ部分に赤みが生じたり、ほてりを感じる場合があります。
翌日からシミ部分に薄いかさぶたができて、濃くみえます。
かさぶたは、1週間くらいで、洗顔などで自然にはがれていきます。
このとき、かさぶたを無理にはがしたりせず、自然にとれるまで待ちましょう。
治療時間も短く、肌へのダメージも少ないので、治療直後から洗顔やメイクができ、美容医療が初めての方でも、気軽に受けられます。
ただし、治療後の肌は敏感なため、日焼け止めを塗るなど紫外線対策をきちんとし、洗顔やスキンケアの際も優しく、こすらないよう注意してください。また、治療後の肌は特に乾燥しやすいため、しっかりと保湿しましょう。
レーザートーニング
費用 | 痛み | ||
---|---|---|---|
ダウンタイム | 治療頻度 | 1~2週間に1回 継続して計4~5回 |
レーザートーニングとは、医療用レーザー機器を使用して、非常に弱いパワーで照射し、肌に余計な刺激を与えることなく、肌の中に滞留しているメラニンに対し、穏やかに働きかけて、徐々に排出させる治療です。
レーザートーニングは、シミやくすみなどの色ムラを改善し、明るく透き通るような肌へと導きます。
また、これまで肝斑※に対して、レーザー治療を行うことは、悪化させる恐れがあるため、禁忌とされてきましたが、現在では、レーザー治療の前にトラネキサム酸・ビタミンC・ビタミンEの内服とハイドロキノン等の外用薬の塗布をしっかりと行い、紫外線対策やスキンケアを見直した上で、それでも改善しない場合に、レーザートーニングを行うことがあります。
※左右対称に、目のまわりを避けてできるシミ。30~40代の女性に多くみられます。
治療時間が短く、治療後すぐにメイクもできるので、気軽に治療が受けられます。
ただし、治療後の肌は敏感なため、日焼け止めを塗るなど紫外線対策をきちんとし、洗顔やスキンケアの際も優しく、こすらないよう注意してください。また、治療部位は特に乾燥しやすいため、しっかりと保湿しましょう。
- Q1:痛みはありますか?
- A1:パチパチとはじけるような痛みが少しありますが、麻酔の必要はありません。
※痛みの感じ方には、個人差があります。 - Q2:治療後は、赤くなりますか?
- A2:軽い赤みが出ることがあります。その場合でも、数時間ほどでおさまります。
※赤みのあらわれ方には、個人差があります。 - Q3:どのくらいで効果を実感しますか?
- A3:1回で治す治療ではなく、回数を重ねて少しずつ改善する治療です。3~4回目の
治療後くらいから、変化を実感する方が多くいらっしゃいます。
※治療回数や変化の感じ方には、個人差があります。
Qスイッチレーザー
費用 | 痛み | ||
---|---|---|---|
ダウンタイム | 治療頻度 | 薄いシミ:1~2回 濃いシミ:3~5回 |
Qスイッチレーザーとは、10億分の1秒という速さで、レーザーを発信する医療用レーザー機器のことをいい、主にシミ治療に使われています。
肌内部にあるメラニン色素を破壊し、肌のターンオーバーにより、皮膚表面に押し出されて、自然に外へ排出されます。
Qスイッチレーザーには、3つの種類があり、それぞれに特徴があります。
① Qスイッチルビーレーザー
「ルビー」という鉱石を使用したレーザー機器で、メラニン色素への吸収性が高く、主にシミ・あざ・刺青除去の治療に使用されています。※治療内容は、医療機関により異なります。
② Qスイッチアレキサンドライトレーザー
「アレキサンドライト」という鉱石を使用したレーザー機器で、メラニン色素への吸収性が高く、主にシミ・あざ・脱毛の治療に使用されています。※治療内容は、医療機関により異なります。
③ Qスイッチヤグレーザー
「イットリウム・アルミニウム・ガーネット」という鉱石を使用したレーザー機器で、主にシミ・あざ・刺青除去の治療に使用されています。弱いパワーで照射し、肌に滞留しているメラニンに対し、穏やかに働きかけるレーザートーニング治療もこちらの機器を使用しています。※治療内容は、医療機関により異なります。
シミ治療のメカニズム
シミにレーザーを照射すると、翌日には、かさぶたができ始めます。このとき、かさぶたを無理にはがしたりせず、自然にとれるまで待ちましょう。
1~2週間後くらいで、かさぶたがはがれて、皮膚がピンク色の状態になります。
約1ヶ月後に、ピンク色の皮膚が徐々に周囲の皮膚となじんできます。
このとき、レーザー照射による炎症のため、もともとのシミより色が濃く見えることがあります(炎症後色素沈着)が、照射1ヶ月後をピークとし、3ヶ月以降から次第に色が落ち着いてきます。
シミ部分に2週間程度テープを貼る場合がありますが、シミ部分を除いて、治療直後からメイクができます。
レーザー治療後の炎症後色素沈着を防ぐために、以下のことに注意しましょう。
① 日焼け止めをこまめに塗るなど、紫外線対策をして、肌を守りましょう。
② 洗顔やスキンケアの際に、ゴシゴシこすらず、肌に刺激を与えないようにしましょう。
③ メラニン色素の生成をできる限り抑えるために、美白剤を使用しましょう。
④ 治療部位は特に乾燥しやすく、デリケートな状態のため、乳液やクリームでしっかり保湿しましょう。