社長が解説

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美容医療を受けるなら知っておきたい基礎知識⑥なんでレーザーでシミが取れるの?

サイト運営会社 株式会社ジェイメックの会長でありながら、機械好きが高じて博士号(理学)を取ってしまった、西村自らが解説!こちらのコラムは、シリーズ形式でお届けいたします。

第6回である今回は、レーザーによる美容医療について、シミ治療を例にお話しします。

※本コラムは、公開当時代表取締役社長を務めておりました弊社西村が執筆しましたので「社長が解説シリーズ」としておりました。2021年7月より西村は取締役会長となりましたため、一部肩書を修正しております。予めご了承ください。

シミってどういう状態?

さて、いよいよ今回は「なんでレーザーでシミが取れるのか?」について、詳しく説明していきます。

美容レーザー治療のメカニズムについて解説する前に、まず、皮膚の構造がどうなっているのかを、簡単に説明しましょう。

まずは皮膚の構造を知ろう

皮膚は下図のように上から角質層、表皮、真皮と大まかに3つの層でできており、皮下組織(脂肪層)、筋肉と続いています。皮膚全体の厚みは2~3mm程度で、角質層と表皮を合わせて0.2mm程度と、とても薄いものなのです。

シミの部分はどうなってるの?

シミと呼ばれる部位では、皮膚色を作っているメラニン顆粒が周囲よりも多く含まれるために、皮膚の色が濃くなり、通常の皮膚の色とコントラストが出来てしまっています。一般にシミと呼ばれるものは、皮膚科学的にいくつかの種類に分類されているのですが、ここでは主に加齢や日焼けが原因で出来るとされている、最も一般的な加齢性のシミ(色素斑)を見ていきます。加齢性のシミでは、メラニン顆粒を作るメラノサイトという細胞が何らかの理由でメラニン顆粒を周囲よりも多く生産してしまい、表皮と真皮の境界のあたりに滞留してしまっています。この過剰なメラニン顆粒とおかしくなってしまったメラノサイトを取り除けば、理論上はシミをなくすことができます。

レーザーで、どうやってシミを取るの?

シミ治療のゴール

シミ治療を安全に行うため、シミの原因となっている「増えすぎたメラニン顆粒」を含む角質層~表皮に熱ダメージを与え、その下にある真皮層には出来るだけ影響を与えないようにすることが、目指すゴールです。これまで述べてきたようにレーザーには、波長、照射時間、照射エネルギー密度(明るさ=強さ)という3つの調節可能なパラメーターがあり、これらを上手く調節して、このゴールを実現します。

まず、どの波長を選ぶ?

シミ治療でダメージを与えたいのはメラニン顆粒なので、理想的にはメラニンによく吸収され、他の酸化ヘモグロビン、水分にはあまり吸収されないレーザーの波長を選ぶことが良いと考え、前回のコラムで紹介したロックス=アンダーソン教授は、ルビーレーザー(波長694ナノメートル)を選びました。ちなみにルビーレーザーの光の波長は、10億分の694メートルとなります。

照射時間はどうしよう?

次に照射時間を決めます。レーザーのエネルギーはメラニン顆粒に吸収され、熱に変わり、メラニン顆粒の温度を上昇させて行きます。レーザーのエネルギーで高温になっていったメラニン顆粒の内部では、水分が気化する時の膨張圧が高まり、最後はその圧力で崩壊しますが、もたもたしてメラニン顆粒の温度をゆっくり上げていくと、その熱が次第に周囲に伝わってしまいます。つまり弱火でトロトロでは、表皮と真皮の境界にあるメラニン顆粒は壊れず、さらに真皮側にも熱が伝わって深いやけどになってしまうことになります。

さて、どうしたらいいでしょう?

もうお分かりですね。真皮に熱の影響を与えないようにするには強火で短く調理する必要がある、すなわちレーザーのエネルギー密度を上げ、短い時間で照射して、メラニン顆粒が真皮に向かって本格的に熱を伝えていく前に、急激に温度を上昇させ壊す必要があるのです。若き日のアンダーソン教授は実験を繰り返し、「周囲の組織に熱ダメージを与えずにメラニン顆粒を壊すための理想的なパルス幅は、50ナノ秒以下である」と計算から導き出しました。50ナノ秒というのは、なんと10億分の50秒=1億分の5秒=2000万分の1秒となり、一瞬という以上に極短い時間です。これはメラニン顆粒の直径が1マイクロメートルと極小なので、あっという間に熱くなってしまうからです。ちなみに1マイクロメートルというのは、100万分の1メートル=1万分の1センチメートル=1000分の1ミリメートルです。

照射エネルギーは?

最後の照射エネルギー、すなわち火加減ですが、弱すぎると何も起きませんし、あまりに強すぎるとメラニン顆粒が急激な圧力上昇で大爆発し、表皮ごと吹き飛んでしまいます。これも実験から、照射時間20ナノ秒のルビーレーザーの場合、1㎠あたり4J(ジュール)前後が望ましいことが分かりました。

照射するとどうなるの?

では、波長694ナノメートル、照射時間20ナノ秒、照射エネルギー4ジュール/㎠で、シミを照射してみるとどうなるのでしょうか?

魔法のようにメラニン顆粒だけが消え、周囲の色調よりも濃いシミが一瞬で消えて正常な色になるはず…が、結果は残念ながら、そう上手くは行きませんでした。

実際にシミに照射してみると、照射部位がひっかき傷のように白くなり、しばらくするとレーザーを照射した部位は色味がむしろ少し濃くなる場合が多いのです。3~5日後にはかさぶたとなり、10日~2週間後にかさぶたがとれたら、シミは消えピンク色の新しい皮膚ができてきます。

なんでかさぶたになっちゃうの?

かさぶたができる理由は、メラニン顆粒が壊れると同時に発生してしまう「衝撃波」という圧力波が表皮を損傷してしまうからです。照射後の皮膚の断面を顕微鏡で覗いてみると、表皮のメラニン顆粒があったと思われる場所に、無数の穴(空包)ができていました。これらの空包はレーザーの熱によるものではなく、衝撃波によって表皮組織が物理的に押し広げられたものです。穴だらけになった表皮の細胞は生きていけず、かさぶたになるのです。

しかしながら、当初の作戦通り、真皮への熱ダメージはありませんので、やけどではありません。表皮のかさぶたがとれるときに壊れたメラニン顆粒の欠片と共に、メラニン顆粒を多量に製造していた細胞、おかしくなってしまったメラノサイトも一緒に剥がれ落ちるので、かさぶたの下に再生した皮膚は、シミの無い正常な状態として治癒します。

レーザー治療後の肌ってどうなるの?

レーザー治療後のかさぶたがとれた後、半数くらいの方は、その部位の皮膚は薄くなって少し赤みが見られますが、傷が治るにつれて赤みも消えていき、一ケ月後にはシミのない元の肌の色に戻ります。

残りの半数の方は、かさぶたがとれた頃から数か月間の間、まるでレーザーの光を浴びたことによる日焼けのように、一時的に照射した部位の皮膚が茶色くなり、3~6ヶ月後かけて、次第に薄くなっていって元の肌色に戻ります。これは炎症後色素沈着と言い、人によって持続期間や色調の程度が異なりますが、レーザー治療後の治癒過程で比較的よく見られるので、あまり心配する必要はありません。この炎症性色素沈着は、いくら先生が完璧なレーザー治療をした場合でも起きる可能性があります。

ケガをして、かさぶたがとれた頃のことを思い浮かべてください。かさぶたがはがれたばかりの皮膚はとてもデリケートです。強く刺激してしまって、せっかく治った傷からまた血が出てしまう、という経験がある方もいるでしょう。同じように、シミ治療を受けた後の傷に刺激を与えてしまうと、またシミができてしまう原因となります。せっかくシミをとったのに、またシミができてしまう、こういったリスクを少しでも減らすためには、治療後の傷の管理、つまり治療を受けてご自宅に帰ってからの、「患者さんご自身によるケアも重要」というのが、ここ最近主流の考え方です。

レーザー後に必要なホームケアについては、また別なコラムで解説しますね。

終わりに

ここまでコラムを読んでくださった皆さん、大変お疲れ様でした。レーザーについて、少しはお分かりいただけましたか?

初回のコラムでもお話しした通り、皆様の「美と健康」への願いを一生懸命サポートすることが、私たちの社会的使命であり存在意義と考えております。美容の施術を受けられるときに、先生が使う機器の名前だけでなく、ジェイメックという会社名も是非!覚えていただければ幸いです。

また美容医療に用いられる機器の仕組みなどの解説をするときには登場する予定です。その時にまたお会いしましょう!

(西村 浩之)

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