クレーター状のニキビ跡(痕)に悩んでいる方は、原因や種類を理解することが大切です。炎症が進むと皮膚の深層が損傷し、跡が残りやすくなります。本記事では、クレーター状のニキビ跡がどのように形成されるか、種類ごとの治療法、そして日常的にできる予防法について詳しく解説します。
監修医師:斉藤 彬先生(柏駅前内科・皮ふ科/皮膚科専門医)
クレーター状のニキビ跡ができるメカニズム
クレーター状のニキビ跡ができるのは、主に炎症が原因です。ニキビが悪化すると、皮膚の深層にまで炎症が広がり、真皮や皮下組織が損傷します。肌の深いところにある組織が損傷し、うまく修復されず、皮膚が凹み、クレーターのような見た目になるのです。また組織のダメージがうまく修復されず、跡が残る原因になります。
クレーター状のニキビ跡の種類
クレーター状のニキビ跡は、形状や深さによっていくつかの種類に分類されます。
それぞれの特徴を理解することで、適切な治療を選択する参考になります。ローリング型、アイスピック型、ボックス型の3つのタイプがあり、それぞれの原因や治療法が異なります。それぞれの特徴や原因、治療法について詳しく見ていきましょう。
ローリング型
皮膚がなだらかにくぼんでいるタイプで、広く凹み、境界がぼやけているのが特徴です。
深いニキビの炎症によって、真皮から皮下組織に瘢痕(はんこん)組織※ができ、皮膚を引っ張ることが原因です。
※組織が再生するときに生じる結合組織
アイスピック型
小さく点状に深く穴が開いているのが特徴です。重度の炎症が長く続くと炎症が毛穴を変形させ、奥深くまで傷つき、毛穴を硬くします。こうして毛穴が開いた状態で傷跡になったものです。
ボックス型
円形や楕円形でくぼみがあり、底面が平坦なクレーター状の凹みが特徴です。浅いものと深いもの、いずれも当てはまります。ニキビの炎症で皮膚の組織が広範囲にダメージをうけ、瘢痕組織が形成されるためです。
クレーター状のニキビ跡の治療法
クレーター状のニキビ跡は、タイプ別に適切な治療法を選択する必要があります。治療法の詳細について見ていきましょう。
レーザー治療
フラクショナルレーザーで皮膚に微小な損傷を与えて再生を促す治療法です。点状にエネルギーを照射することで、少ないダウンタイムでコラーゲン生成を刺激し、肌を滑らかにします。ニキビ跡が浅い場合、治療したいニキビ跡が広範囲にある場合に向いています。
治療後は一時的な赤み、腫れ、ヒリヒリ感が見られます。波長によって効果やダウンタイムは異なります。
マイクロニードル治療
細い針を用いて微小な傷を皮膚に作り、肌の本来もつ傷を治す力(創傷治癒力)を利用してコラーゲン生成を促す治療法です。フラクショナルレーザーと同様、広い範囲に浅いニキビ跡がある場合に適しています。
軽い赤みや腫れ、ヒリヒリ感が生じることがありますが、通常数日で治まります。ダウンタイムは2~3日程度で、日常生活に支障をきたしにくい治療です。
マイクロニードルRF治療
マイクロニードルと同様、細い針を用います。針の先端から高周波を流すことで皮膚の深部に熱を加え、コラーゲン、エラスチンの生成を促進します。ニードルと高周波の組み合わせにより、施術直後は引き締め効果も期待できます。
一時的な赤みや腫れが生じることがあり、熱感を覚えることもあります。ダウンタイムは短く、通常1~3日程度です。
通常のマイクロニードル治療と比較して、痛みが少ないといわれています。
単純縫縮(切除縫合)
ニキビ跡の部分を切り取り、皮膚を縫合することで凹凸を改善する手術です。病変が高度で、機能障害を伴う場合に行われることがあります。しかし、患部を切り取るだけでは再発しやすいため、放射線を使った治療や、患部を圧迫する方法をあわせて行う場合があります。
ダウンタイムは1~2週間ほどで、傷が治るまでのケアが大変重要です。肌に与える負担も大きく、縫合部分に一時的な腫れや赤み、傷跡が残ることがあります。リスクや有効性について十分に医師に確認しましょう。
注入治療
注入治療は、クレーター状のニキビ跡に対してヒアルロン酸やコラーゲンなどのフィラー(充填剤)を凹んだ部分に注入し、皮膚を物理的に持ち上げて平らにします。身体への負担が小さく、細い注射針を使うため傷跡が残る心配がありません。
ただし、注入されたフィラーは時間とともに体内で吸収されるため、効果は一時的です。副作用としては、注入後に軽い腫れや赤みが現れることがありますが、これらは数日で治まることがほとんどで、日常生活に大きな支障はありません。
治療を受ける際は、保険適応外となることに注意し、有効性について医師に相談しましょう。
クレーター状のニキビ跡を治療するときの注意点
クレーター状のニキビ跡は、治療法によって適応、効果、治療期間、費用、痛み、ダウンタイム、治療回数(通院回数)も異なるため、よく検討する必要があります。クレーター状のニキビ跡を治療する際の注意点について、詳しく見ていきましょう。
複数回の治療が必要な場合がある
クレーター状のニキビ跡は、レーザー治療やマイクロニードル治療では通常複数回の治療が必要です。治療の度に肌の再生を促し、少しずつ凹みを改善します。治療回数は症状の深さや範囲により異なりますが、5回以上必要なケースもあります。
治療後は日焼け・摩擦・血行が良くなる行為に気を付ける
治療後の肌は非常に敏感です。たとえばレーザー治療後は軽いやけどのような状態になります。紫外線にさらされると色素沈着が起こりやすいため、日焼けを徹底的に避け、外出時は日焼け止めを塗ることが必須です。
また、血行を良くする行為(運動やサウナなど)は炎症を悪化させる恐れがあるため、控えるようにしましょう。肌に直接摩擦を加えないよう、優しくケアすることも重要です。
クレーター状のニキビ跡の予防法
クレーター状のニキビ跡を予防するためには、ニキビを放置しない、悪化させないことが不可欠です。そのためには日常的に正しいスキンケアも大切ですが、市販製品で効果が得られなければ、皮膚科の処方薬も必要です。
また専門的治療を早めに受けることでニキビの悪化を防ぎ肌のダメージを最小限におさえることができます。
とくに、ピーリング剤(例:AHAやBHA配合の製品)を定期的に使用することで、古い角質を除去し、皮膚のターンオーバーを促進します。これにより、毛穴の詰まりや炎症を抑え、ニキビの悪化を防ぐことができます。
またビタミンC誘導体配合の化粧品はコラーゲンの生成を促し、肌の凹凸を滑らかにするサポートをします。こうしたケアは、ニキビが悪化しないうちに始めるとよいでしょう。
ニキビができた段階で早めに適切な治療を行うことも、クレーター状のニキビ跡を防ぐ重要なポイントです。炎症が進行すると深いダメージを与え、クレーターを形成しやすくなります。皮膚科で適切な薬を処方してもらい、ニキビを悪化させないことが大切です。
クレーター状のニキビ跡は自力で治すことは可能?
セルフケアでクレーター状のニキビ跡をケアすることはできますが、完全に消すことは難しいといわれています。ピーリング剤やビタミンC誘導体を含む化粧品は、肌の再生を助け、凹みを緩和する(自然治癒によるもの)効果があります。しかし、深いクレーター状のニキビ跡には限界があります。
自力でのケアは予防や軽度の改善には役立ちますが、すでに深いクレーターができている場合は医師による治療が必要です。
クレーター状のニキビ跡は早めに医師に相談しよう
クレーター状のニキビ跡は、ニキビが悪化する前に適切な治療をうけることで、クレーター形成を予防できます。すでにクレーターができてしまった場合でも、近年の医療技術で適切な治療をうけることでクレーターを目立たなくすることができます。早めに専門医に相談し、適切な治療を開始することが大切です。専門的な治療を組み合わせることで、肌を再生し、凹凸を改善することができます。
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