トラネキサム酸でシミが消えると聞いたけれど、本当に効果はあるのか、副作用はないのかなど、不安や疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。トラネキサム酸には、シミだけではなくニキビ跡の改善や美白効果などもあります。
今回は、トラネキサム酸のシミへの効果や副作用、使用方法などについて詳しく解説します。
監修:今野みどり先生(石井クリニック 院長 /日本形成外科学会専門医 / 皮膚腫瘍外科指導専門医)
トラネキサム酸とは
トラネキサム酸とは、タンパク質を構成するリシンというアミノ酸をベースに人工的につくられたアミノ酸の一種です。医療現場では炎症やアレルギーを抑える成分として用いられていますが、2002年に美白成分として厚生労働省から認可を受けたことで、現在はシミ治療にも使用されています。
トラネキサム酸の効果
トラネキサム酸には、シミや肝斑、ニキビ跡の改善などさまざまな効果が期待できます。トラネキサム酸の効果について、メカニズムとあわせて詳しくみていきましょう。
シミの改善・予防
シミの正体は、メラノサイトで生成される色素であるメラニンが肌に沈着したものです。メラニンには、紫外線や摩擦などの刺激が肌の奥へと届かないように防ぐ働きがあります。通常、肌の新陳代謝によって体外へ排出されるため、すぐにシミになることはありません。しかし、生活習慣の乱れや加齢などの影響で新陳代謝が低下すると、メラニンが肌に留まってシミやくすみをつくってしまいます。
トラネキサム酸には、メラノサイトを活性する要因とされている「プラスミン」や「プロスタグランジン」の働きを抑えることで、メラニンの過剰な生成を抑える働きがあります。そのため、トラネキサム酸の使用によりメラニンの生成よりも新陳代謝の方が早くなり、シミの改善・予防の効果が現れるのです。
ニキビ跡の改善
ニキビ跡の黒ずみは、ニキビの炎症によりメラニンが過剰に生成され、肌に沈着したもの(炎症性色素沈着)です。トラネキサム酸が抑制するプラスミンは炎症にも関わっているため、ニキビの炎症を抑えてニキビ跡の改善を促します。また、プロスタグランジンもメラニンの生成に関わっていることから、これも同時に抑制することで色素が沈着するのを抑えるのです。
肝斑の改善
肝斑はシミの一種ですが、一般的なシミである老人性色素斑のように強いレーザーでは改善せず、むしろ悪化することがあります。そのため、肝斑と老人性色素斑が併発しているケースでは、レーザーを使用できません。トラネキサム酸であれば、一般的なシミへの効果と同じメカニズムで肝斑の改善が期待できるため、併発している場合の治療に適しています。
美白効果
紫外線や摩擦などの影響でメラニンが過剰に生成されて肌のトーンが暗くなっている場合は、トラネキサム酸を使用することで肌が明るくなる可能性があります。シミや肝斑への効果と同様にプラスミンやプロスタグランジンの働きを抑制するため、メラニンの生成を抑え、肌のトーンアップを実現します。
止血
トラネキサム酸には、優れた止血効果があります。これは、トラネキサム酸が出血を促すプラスミンの働きを抑えるためです。医療分野では、白血病や再生不良性貧血、肺出血、性器出血などの抑制に使用されています。
抗炎症作用
トラネキサム酸が抑えるプラスミンは、炎症やアレルギーに関与しているため、抗炎症作用を発揮します。肌の赤み、赤ニキビ(炎症が起きたニキビ)などの改善が期待できます。
トラネキサム酸の使用方法
トラネキサム酸が含まれている内服薬には、市販薬と医療用医薬品があります。また、化粧水やクリームといった化粧品にも含まれているなど、トラネキサム酸を取り入れる方法はさまざまです。それぞれの違いや使用方法について詳しくみていきましょう。
市販薬
市販薬は一般用医薬品のことで、医療用医薬品と比べて主成分の含有量が少なく設定されています。その種類は4つに分類されており、要指導医薬品、第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品があります。なお、要指導医薬品と第1類医薬品は薬剤師による対応および書面での情報提供が義務付けられており、そのうち要指導医薬品については購入の際に対面で使用方法などの説明を受けなければなりません。
第2類、第3類医薬品は薬剤師または登録販売者が対応し、情報提供については第2類医薬品は努力義務、第3類医薬品には法律上の規定はありません。市販の内服薬におけるトラネキサム酸の1日あたりの上限量は750mgです。
医療用医薬品
医療用医薬品とは、医師の診断を受けたうえで発行される処方せんがなければ購入できない医薬品です。市販薬と比べて主成分の含有量が高い一方で、副作用も現れやすいとされています。医療用医薬品のトラネキサム酸の場合、症状によって1日あたり500~2,000mgが処方されます。
化粧品(化粧水、美容液、クリーム)
トラネキサム酸は、化粧水や美容液、クリームといった化粧品にも含まれています。身体の外側からトラネキサム酸でアプローチできるので、特に薬の服用ができない方や苦手な方におすすめです。また服用に問題のない方であれば、併用することでさらに高いシミ改善・予防効果が期待できます。
トラネキサム酸の使用期間・効果が現れる時期
トラネキサム酸の使用量およびシミに対する効果が現れるまでの期間を示す信頼性が高いデータは見つかりませんでした。また、効果が現れるまでの期間には個人差があるため、トラネキサム酸含有の薬の処方を受けた病院・クリニックの医師や薬剤師に質問するのがいいでしょう。
トラネキサム酸の副作用
トラネキサム酸には、主に次のような副作用があります。
・食欲不振
・嘔吐
・下痢
・胸やけ
・悪心
・眠気
・湿疹
・かゆみ
・けいれん(人工透析を受けている人)
・血栓性の病気の悪化
副作用が起きるリスクは個人差があり、また中には使用できない人もいます。そのため、トラネキサム酸の薬を使用する場合は、必ず医師に持病を伝えるようにしてください。
トラネキサム酸以外のシミに効く成分
トラネキサム酸の他にも、シミに効く成分がいくつかあります。次のような成分を併用することで、シミの効率的な改善・予防が期待できます。
ビタミンC誘導体
ビタミンC誘導体は、ビタミンCの浸透性を高めた化合物です。ビタミンCには優れた美容効果がある一方で、肌に浸透しにくい点が問題でした。そこでビタミンCの分子の一部を変化させ、肌への浸透性を高めたものがビタミンC誘導体です。
体内でビタミンCとして作用し、メラニンの合成に関わるチロシナーゼの活性を阻害することでシミを薄くする効果が期待できます。
アルブチン
アルブチンは、梨やマッシュルームなどに含まれる美白成分です。メラニンの合成に関わるチロシナーゼの活性を阻害して、メラニンの生成を抑えることでシミの予防効果を発揮します。なお、ハイドロキノンにブドウ糖を結合したハイドロキノン配糖体もアルブチンと呼ばれます。
日常的に行うべきシミ対策
トラネキサム酸でシミ対策をしていても、普段からメラニンの生成を促す行為をしている場合は十分な効果が期待できません。次のようなシミ対策も同時に行うようにしましょう。
紫外線対策
紫外線による影響はメラニンの生成を促進するため、日焼け止めや帽子、アームカバー、日傘などで万全に対策することが大切です。紫外線は夏に強く降り注ぐものの、年中通して一定以上の量を維持しています。つまり、冬でも紫外線対策をしなければシミがつくられてしまう可能性があるということです。
適切な洗顔
肌を力強くこすると、摩擦によって肌が刺激を受けてメラニンが生成されます。そのような洗顔を毎日続けるとシミができやすくなるため、さっそく今日から洗顔方法を見直しましょう。正しい洗顔方法は次のとおりです。
1.ぬるま湯で顔を濡らす
2.泡立てネットで洗顔料を泡立てる
3.泡のクッションでやさしく丁寧に洗う
4.ぬるま湯で十分にすすぐ
規則正しい生活
肌の新陳代謝(ターンオーバー)を整えて、メラニンが排出されやすい状態をつくることも重要です。十分かつ良質な睡眠や栄養バランスのとれた食事、適度な運動などを心がけましょう。
ストレスケア
過剰なストレスは、交感神経を優位にします。その結果、血管が収縮して血流が悪くなり、肌の新陳代謝に必要な成分が届きにくくなります。ストレスを一気に解消することは難しいため、なるべくストレスを溜めないようにしつつ、小まめに解消するようにしましょう。
ストレス解消法は人それぞれですが、十分かつ良質な睡眠や適度な運動、趣味を楽しむ、ヨガ、音楽鑑賞、自然に触れるなどが挙げられます。
トラネキサム酸に関するQ&A
トラネキサム酸の効果やリスク、使用期間など、よくある質問に回答します。
トラネキサム酸には血栓のリスクがあると聞いたのですが大丈夫なのでしょうか?
トラネキサム酸には血栓が溶けるのを抑える作用があるため、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓性の病気を持つ方は使用できません。トラネキサム酸の使用を検討している場合は、事前に医師や薬剤師に持病を必ず伝えましょう。
トラネキサム酸はいつまで飲み続けていいのですか?
トラネキサム酸を飲み続ける期間については、明確には定められていません。一般的に数ヶ月で効果を実感できることが多いようですが、個人差があります。
トラネキサム酸を飲むのをやめたらどうなりますか?
トラネキサム酸の効果が失われ、元の身体の状態に戻ると考えられます。そのため、シミの改善・予防効果を維持したい場合は、長期的に飲むことになるでしょう。
トラネキサム酸を飲むと白髪が増えると聞いたのですが本当ですか?
トラネキサム酸で白髪が増えるとの説がありますが、科学的根拠に基づいた信頼性が高いデータはありませんでした。
トラネキサム酸はかゆみに効果はありますか?
トラネキサム酸には炎症やアレルギーを抑える働きがあるため、これらに伴うかゆみが改善する可能性があります。
まとめ
トラネキサム酸には、シミだけではなく肝斑やニキビ跡などの改善効果があります。効果の程度や現れやすさについては個人差があるため、使用期間や使用量については医師・薬剤師に相談することをおすすめします。また、副作用や使用できない人についてもチェックして、適切な形で取り入れるようにしましょう。
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