切らないワキ汗治療

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【医師監修】寒いのに脇汗をかく原因は?対処法や生活での注意点を解説

監修医師:小林 秀行 先生(かずさ形成スキンクリニック 院長 / 形成外科医)

寒いのに脇汗をかく場合、何かの病気が原因なのではないかと不安に思う方も多いのではないでしょうか。多汗症が原因の場合もありますが、体のバランスが崩れて体温調節がうまくできていないのかもしれません。

本記事では、寒いのに脇汗をかく原因や対処法、日常生活での注意点などについて詳しく解説します。

監修:小林 秀行 先生(かずさ形成スキンクリニック 院長/形成外科医)

寒いのに脇汗をかく原因

寒い時期にもかかわらず脇汗をかく場合は、次のような原因が考えられます。

基礎代謝が上がる

基礎代謝とは、呼吸や内臓の活動、体温調節といった生命維持に欠かせないエネルギーのことです。寒くなると身体や内臓を冷えから守ろうと代謝機能が活発になり、少し体を動かすだけでも体温が上がりやすい傾向があります。

しかし体温が上がりすぎると、今度は汗を出して体温を下げようと身体が働くため、基礎代謝が上がる寒い時期はむしろ汗をかきやすいとも言えます。特に脇は皮膚と皮膚が密着した通気性の悪い空間であり、まっ先に汗ばむ部位のひとつです。

ホルモンバランスの乱れ

ホルモンにはさまざまな種類がありますが、ここでいうホルモンバランスとは、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌量のことです。この2つのホルモンは、それぞれ次のような役割を果たしています。

エストロゲン:主に女性の生殖機能にかかわるほか、骨格筋や脂肪、エネルギー代謝などに作用する
プロゲステロン:体温の上昇、食欲の増進などに作用する

これらのホルモンは、分泌量が周期的に変動します。しかし、これらのバランスが崩れてしまうと体の機能を調節する自律神経のバランスまで崩れてしまい、うまく体温調節ができずに脇汗が出やすくなることがあります。

睡眠不足・ストレスなどによる自律神経の乱れ

前述のとおり、自律神経のバランスの崩れは脇汗にも関連しています。

自律神経は交感神経と副交感神経で成り立っており、心身の状態に応じて切り替わることで良好な状態を維持しています。しかし何らかの原因によりこのバランスが崩れると、交感神経の働きが過剰になり、通常よりも多く汗をかきやすくなります。

自律神経のバランスが崩れる主な原因として、ストレス、生活リズムや食生活の乱れなどが挙げられます。

これらの要因により心身に大きな負担がかかることで、さらにストレスを感じるようになったり睡眠不足になったりして、ますます自律神経のバランスが乱れます。その結果、脇汗だけではなく頭痛やめまい、動悸などが起こり、全身に影響を与えることがあります。

保温効果が高い衣類の着用

冬は防寒意識が高まり、保温効果の高い衣類を選びがちです。例えば、厚手のウールセーターやフリース製品などが代表的ですが、これらの衣類は優れた保温性を持つため、厚着をしなくても温かい状態を維持できます。

しかし、保温効果が高い衣類は体温が上昇しやすくなるだけでなく、熱が放出されにくい特徴があります。そのため体が温まりすぎる結果として汗をかきやすくなり、脇汗の原因にもつながります。

多汗症

もし脇汗だけが多量に出るのであれば、それは局所性多汗症かもしれません。

多汗症とは、通常より発汗量が多い症状のことです。症状が全身に見られる「全身性」、部分的に現れる「局所性」、原因がなく特発的に発症する「原発性」に大きく分けられますが、その汗のほとんどは水分で構成されているため、においはありません。

多汗症の原因は、全身性と局所性で異なります。

【全身性多汗症の原因】
循環器疾患、感染症、内分泌・代謝疾患(甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、末端肥大症、カルチノイド腫瘍)など

【局所性多汗症の原因】
脳梗塞、末梢神経障害、不安障害など

そのほか原因が不明なものは、全身・局所にかかわらず原発性の多汗症とされています。原因不明の場合は根本的な治療が困難ですが、局所的な多汗症は汗の量を抑える処置を受けることで、悩みを緩和できる可能性があります。

寒いのにかく脇汗の対処法

寒いのにどうしても脇汗をかいてしまう場合は、次のような対処をしてみましょう。

生活習慣を整える

脇汗の対処には、自律神経のバランスを整えることが重要です。そのためには睡眠や運動、ストレスなどに注目し、適切に対応しましょう。

十分な睡眠は自律神経を安定させます。夜更かしや就寝前のスマホ操作などを避けるほか、寝室の温度や湿度の調整、寝る前のリラックス法などを上手に取り入れ、質の高い睡眠を心がけましょう。

また運動も自律神経を整え、血行を良くする効果があるため、体温のコントロールに良い影響を与えます。ウォーキングなどの軽い運動を毎日意識し、無理なく体を動かすことが大切です。脂肪の多い方の場合は、適度な運動で消費カロリーを増やせば、脇汗の予防だけでなく、体型の改善にもつながります。

このほか、ストレスも自律神経の乱れの原因となるので、こまめに発散するようにしましょう。十分な睡眠や適度な運動もストレスケアの方法です。音楽鑑賞や映画鑑賞、散歩、趣味の時間などもストレス解消に役立つでしょう。どんなに忙しくてもできるだけ隙間時間を見つけ、その日のストレスはその日のうちに発散させることがポイントです。

制汗剤やグッズを使う

根本的な解決にはなりませんが、制汗剤や脇汗パッド、通気性が良いインナーなどを使用することで、脇汗の悩みを緩和することができます。例えば、制汗剤は汗の分泌を抑えたり蒸れによるにおいを軽減できたりします。また通気性が良いインナーは、体温の上がりすぎを防ぎ、汗をかきにくい環境にしてくれます。万一、脇汗をかいたとしても、通常のインナーよりも速く乾きやすいというメリットもあります。

多汗症の治療を受ける

多汗症は、メスを使った外科手術やボツリヌストキシン注入、医療機器による切らない治療などを受けることで症状の改善が望めます。また塗り薬や飲み薬で改善できることもあります。医療機関によって実施できる多汗症治療や実績、評判も異なるため、事前に確認することをおすすめします。

なお治療については、後ほど詳しく説明します。

脇汗をかいたときのNG行為

寒いのに脇汗をかく場合、間違った対処法でかえって状況が悪化することもあります。次のような行為は避けるようにしましょう。

放置する

脇汗をかいたまま放置すると、脇の周りが湿った状態で持続され、ストレスが大きくなる可能性があります。その結果、自律神経のバランスが崩れて交感神経が優位になり、さらなる発汗を引き起こしかねません。

また、脇汗による不快感やにおいが増すこともストレスを招く原因であり、悪循環に陥ってしまいます。脇汗をかいたときは、こまめに拭き取るようにしましょう。

薄着になる

寒い冬に脇汗を抑えようとして薄着になる行為は、効果的な対策とは言えません。むしろ身体が冷えることで風邪をひいたり、寒さによるストレスから脇汗の量が増えたりするおそれがあります。

薄着になるのではなく、外出時は通気性の良い衣類を着用する、制汗剤や脇汗パッドなどを使用して対処するとともに、日頃から自律神経やホルモンのバランスを整えるための生活を心がけてください。

医療機関で受ける多汗症の治療法

脇汗の原因が多汗症である場合、医療機関でさまざまな治療を受けることができます。ただし、それぞれにはメリットとデメリットがあり、また治療法は医療機関によって異なります。医師からしっかり説明を受け、納得した上で自身に適した治療法を選択することが大切です。

多汗症の治療法について詳しく見ていきましょう。

外用薬

過剰な脇汗は、薬による治療で症状の改善が期待できます。内服薬(飲み薬)と外用薬(塗り薬)があり、最初に外用薬が検討されます。

中でも抗コリン外用薬は、汗腺に汗をかくように伝える信号をブロックすることで発汗を抑える薬剤で、局所的に使用するため副作用の心配も少ないとされています。また、日本で多汗症治療として保険適用のある外用薬です。

剤形にはジェルタイプとシートタイプがあり、いずれも作用は同じです。

ボツリヌストキシン注入

ボツリヌス菌という細菌が作り出す毒素を無毒化し、それを注射で脇に注入して神経伝達を阻害し、結果的に脇汗を軽減する治療法です。

効果が現れるまでには2~3日程度かかり、その後4ヵ月ほど持続します。根本的な治療法ではないものの、一時的に脇汗を抑えられるため多汗症の悩みを軽減できます。4ヵ月以上の間隔を空ければ繰り返し施術できますが、その都度費用がかかる点に注意が必要です。

ただし、ボツリヌストキシン注入の効果には個人差があるので、十分な効果が現れなかった場合はほかの治療法を検討しましょう。

医療機器による治療

多汗症治療のために、医療機器を採用している医療機関もあります。例えば「切らないワキ汗治療器」は、汗腺の大部分が存在する真皮深層から皮下組織浅層へマイクロ波を照射し、約60~70℃に加熱することで汗腺を焼灼・凝固させる仕組みです。熱といえば火傷をするイメージがあるかもしれませんが、皮膚表面を冷やす機能がついており、その心配はほとんどありません。

また、メスを使用した治療法とは異なり手術による傷ができないため、見た目がきれいな脇を保ちたい方にも向いています。施術にかかる時間は両脇で1~2時間半程度で、照射範囲によって異なります。

外科手術

外科手術による局部性多汗症の治療方法には、交感神経遮断術や剪除法、切除法、吸引法、皮下組織削除法があります。

「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」によると、脇汗に対しては薬剤や機器による治療で十分な効果が現れなかった場合、交感神経遮断術(胸腔鏡下胸部交感神経節切除術/ETS)を考慮してもよいとされています。ただし、臨床試験や疫学研究による知見において有効性に関する十分な根拠がないため、重症な多汗症でなおかつ本人の強い希望があるケースにのみ選択肢となる方法です。

また交感神経遮断術を行なった場合、背中や太もも、腰など脇以外の場所から出る汗が増えることがあり、さらに40歳以上の方や過去に胸部の手術を受けた方などに対しては推奨されていません。

そのほかの外科手術も含め、どの方法も副作用が起こるリスクがあるだけでなく、一度神経や汗腺を取り除くと元に戻すことはできません。そのため、メリットとデメリットを十分に理解した上で、検討するようにしてください。

まとめ

寒いのに脇汗をかく場合、ホルモンや自律神経のバランスが崩れている可能性があります。また、あまりにも多量の脇汗をかく場合は多汗症を疑いましょう。多汗症は放置すると悪化するおそれがあるので、早めに対処することが大切です。

まずは、自分が多汗症かどうか、治療した方がよいかどうかを判断してもらうためにも、医療機関を受診することをおすすめします。
ワキ汗でお悩みの方へ!治療が受けられる医療機関はこちらから検索できます。
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