自宅やサロン、クリニックで脱毛した際に、場合によっては肌や毛穴に負担がかかり、「毛嚢炎(もうのうえん)」と呼ばれる炎症が起こることがあります。通常は数日で自然治癒しますが、悪化するケースもあるので注意してください。
この記事では、脱毛が原因で起こる毛嚢炎の予防方法についてまとめています。また、毛嚢炎になってしまったときに早く治す方法、注意すべき点についても説明します。
監修:曽山聖子先生(セイコメディカルビューティクリニック 理事長/日本医学脱毛学会 理事)
毛嚢炎とは?
まずは「毛嚢炎(もうのうえん)」とは何かについて説明していきます。
毛嚢は、毛穴の奥の毛根を包んでいる部分で、毛包とも呼ばれます。何かしらの原因によってこの毛嚢で炎症が起きた状態が毛嚢炎です。毛穴がある場所ならどこでも毛嚢炎になる可能性がありますが、特に顔や背中、うなじ、ワキ、VIO、太ももなどにできやすい傾向があります。
毛嚢炎の原因
毛嚢炎の根本的な原因は細菌です。原因となる主な細菌は「黄色ブドウ球菌」で、これが毛穴に入り込むことで毛嚢に炎症を起こします。ただし、原因となるのは黄色ブドウ球菌だけではありません。表皮ブドウ球菌や皮膚の常在菌などによっても毛嚢炎が起こるケースもあります。
脱毛治療についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
皮膚のバリア機能が低下していたり、肌の表面に傷がついていたりすると、毛穴から原因菌が侵入しやすくなるので注意しましょう。
脱毛で毛嚢炎が起こる理由
脱毛によって毛嚢炎が起こる理由はいくつか考えられます。例えば、自宅で剃刀(カミソリ)や除毛クリームを使う場合、少なからず肌はダメージを受けています。それらが原因で毛嚢炎になることもあります。
また、医療脱毛で使用されるレーザーは毛根まで届きますが、効果が高い分、肌のバリア機能にも影響します。肌のバリア機能が弱まると毛嚢炎になりやすくなるので、脱毛後のケアは十分に行なうことが重要です。クリニックでの施術後、1〜2週間以内に毛嚢炎が起きたら、脱毛が原因のひとつである可能性が高いと考えられます。
脱毛後のケアなどの注意点については後述します。
毛嚢炎の主な症状
毛嚢炎になると毛穴を中心に赤みが広がり、皮膚の中央部分が少し盛り上がります。ひとつだけポツンとできることもあれば、さまざまな部位に複数できることもあります。
毛嚢炎の症状が軽度であれば大きな痛みなどは伴いません。しかし、毛嚢炎が悪化すると赤みや痛みは強くなります。さらに炎症が進行すると発熱などの体調不良が起こることもあるため、症状が続くときは皮膚科を受診しましょう。
症状が悪化して膿(うみ)ができている場合は、切開するなどの処置が必要なケースもあります。
毛嚢炎が治るまでにかかる期間
毛嚢炎が治るまでの期間には個人差がありますが、たいていは数日〜1週間程度で自然に治癒していきます。
ただし、ケアが不十分だったり、不衛生な環境で生活していたりすると、治りは遅くなります。そのまま放置しておくと、症状が悪化する可能性もあるので、毛嚢炎になったら「正しく対処する」「専門医などに相談する」ことが大切です。
脱毛が原因の毛嚢炎を予防する・早く治す方法
ここからは脱毛が原因で起きた毛嚢炎を予防する方法、早く治す方法について説明していきます。
繰り返しになりますが、毛嚢炎は細菌感染が原因です。もともと皮膚に存在する菌が原因になるケースもあるため、「菌を繁殖させないこと」「肌のバリア機能を維持すること」などが重要になります。
脱毛が原因の毛嚢炎の予防や、早く治すには、以下のような方法があります。
雑菌が繁殖しやすい箇所は特に清潔に保つ
原因となる菌が繁殖しなければ、毛嚢炎にはなりません。
しかし、過剰な皮脂は菌の餌になり、蒸れていると菌はさらに繁殖しやすくなります。そのため、皮脂の分泌が多い箇所、蒸れやすい箇所は特に清潔に保つようにしましょう。中でもムダ毛の濃い箇所は蒸れやすい傾向があります。
蒸れが気になる人は、通気性の良い素材の下着を選ぶ、肌に触れる寝具などを清潔に保つことでも、毛嚢炎の予防に役立ちます。
スキンケアをしっかりと行なう
自宅だけでなく、サロン、クリニックにおける脱毛でも肌は少なからずダメージを受けます。それによって肌のバリア機能が低下すると毛嚢炎になりやすくなるため、スキンケアをしっかりと行なうことが重要です。
バリア機能が低下すると、通常よりも肌が乾燥しやすくなり、また乾燥した肌はダメージを受けやすくなります。そのため、サロンやクリニックに通っている最中や脱毛後は、いつも以上に丁寧な保湿を心がけてください。脱毛によるダメージの感じ方には個人差がありますが、何かしらの症状が出ていなくてもしっかりと保湿することは大切です。
このほか、紫外線も肌にダメージを与えるので、日焼け止めの使用も予防には効果的です。また、入浴の際は肌を傷つけないように優しく洗い、入浴後はクリームなどで十分に保湿しましょう。
脱毛中のムダ毛処理は負担の少ない方法を選択する
サロンやクリニックで脱毛する場合、剃り残しの処理やシェービングを行なってくれるケースもありますが、一般的に施術を受ける前にムダ毛の自己処理が必要になるため、負担の少ない方法を選ぶようにしましょう。
例えば、剃刀(カミソリ)などは肌の表面にダメージを与え、毛嚢炎の原因になることがあります。毛抜きやワックスなども、脱毛前の自己処理に使ってはいけません。電気シェーバーを毛の流れに沿って優しく動かせば、肌にかかる負担は比較的少なく済みます。ただし、使用する器具が不衛生だと雑菌が傷口から入り込む危険性があるため、注意するようにしましょう。
自己処理の前後は、保湿などのケアをしっかりと行なうようにしてください。
日々の食事や生活リズムに注意する
肌のバリア機能を低下させないためには、日々の食事や生活リズムに注意することもポイントです。
肌は一定周期でターンオーバーすることで健康な状態を維持しています。しかし、栄養バランスが悪かったり、生活リズムが崩れていたりすると、ターンオーバーの周期も狂ってしまいます。
脱毛が原因の毛嚢炎を起こさないためには、普段の生活スタイルにも心がけるようにしましょう。
脱毛後の毛嚢炎で注意すべきこと
毛嚢炎の予防方法について確認してきましたが、気をつけていても脱毛後に毛嚢炎になることはあります。
もし脱毛後に毛嚢炎になった場合は、以下の点に注意してください。
気になっても毛嚢炎を潰すのはNG
肌にポツポツと毛嚢炎ができると気になりますが、潰すのは絶対にNGです。一般的には1週間程度で自然に治りますが、潰してしまうと跡が残る可能性もあります。
また、毛嚢炎ができた箇所はできるだけ触れないようにしてください。手が汚れていると状態を悪化させてしまうので、毛嚢炎になったら「触らない」「潰さない」が大切です。
毛嚢炎ができた部分は優しく洗い、清潔な状態を保ち、肌が乾燥しないように保湿しましょう。
自己判断で市販薬を使用するのは危険
脱毛後の皮膚に赤みや腫れができた場合、その原因によって効果のある薬は異なります。
特に毛嚢炎はニキビと似ているため、ニキビ用の市販薬を誤って使用してしまうこともあります。すると、治るのが遅くなったり、症状を悪化させたりするケースも起こり得るので、原因が分からないときは、自己判断で市販薬を使用しないようにしてください。
自宅での脱毛・除毛で症状が出た場合は、専門医やドラッグストアの薬剤師、登録販売員に相談するのがいいでしょう。また脱毛サロンやクリニックに通っている人は、担当の医師やスタッフに相談してください。医師がいるという点ではクリニックの方が安心ですが、サロンでも提携医療機関を紹介してもらえることがあります。
ステロイドなどの薬は用法用量を守る
毛嚢炎の症状が出た場合、ステロイド外用薬が処方されるケースも多いようです。ステロイドには抗炎症作用があるため、皮膚の赤みや腫れ、かゆみに対して効果を発揮します。
ただし、ステロイド薬には免疫を抑制する作用もあります。そのため、ステロイドが原因でさらに菌に感染することも考えらえるため、過剰な使用は毛嚢炎の症状悪化を招くおそれがあります。ステロイド外用薬を使用する際は、医師の指示に従い、用法用量を必ず守るようにしてください。
このほか、毛嚢炎は黄色ブドウ球菌などの細菌が原因で起こることから、抗菌薬が使用されることもあります。
繰り返しになりますが、原因がはっきりしない、どの薬が良いのか分からない場合は、専門医などの判断を仰ぎ、その指示に従って薬を使用するようにしてください。
毛嚢炎の症状がひどい場合は脱毛できない?
クリニックやサロンでの脱毛は複数回通うのが一般的ですが、その最中に毛嚢炎が起きた場合、状態によっては施術を続けられないこともあります。
毛嚢炎が部分的で、症状も軽度なら、大きな心配はいりません。しかし、広範囲に広がっていたり、状態が悪化していたりするときは、治るまで「脱毛を控える」もしくは「該当部位を避ける」などの対応が取られます。
このような対応は毛嚢炎に限らず、そのほかの肌トラブルの場合でも同様です。毛嚢炎のような症状があり、脱毛できるか不安なときは、クリニックやサロンのスタッフに確認するようにしてください。
脱毛後の毛嚢炎が治らないときは早めに皮膚科・クリニックで相談を
脱毛後は肌のバリア機能が弱まりやすいため、原因菌に感染しやすく、毛嚢炎になるケースもあります。また乾燥や紫外線も肌トラブルの一因であるため、脱毛中もしっかりとスキンケアを行ないましょう。
基本的に毛嚢炎は1週間程度で自然に治るため心配いりませんが、手で触れたり、潰したりしないように注意しながら、清潔な状態を保つことが重要です。ただし、「2週間経っても良くならない」「徐々に状態が悪化している」「強い痛みや腫れなどの症状がある」といったケースが見られた場合は、早めに皮膚科やクリニックで相談してください。
毛嚢炎の治療には市販薬が有効なケースもありますが、知識のない人が自己判断で使用すると、後で皮膚トラブルを引き起こす可能性もあります。そうならないためにも、脱毛後に炎症が見られたら、速やかに専門医の診察を受けるようにしましょう。また薬を使用する際は、医師や薬剤師から指示された用法・用量をきちんと守り、正しく使用するようにしてください。
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