切らないワキ汗治療

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【医師監修】切らないワキ汗治療器って何?!お医者さんに聞いてみた

監修医師:藤本 卓也 先生(こまちクリニック 院長 / 形成外科専門医)

みなさんは、「切らないワキ汗治療器」というものを聞いたことはありますか?ほとんどの方が「聞いたことがない」「何それ?」と思っていることでしょう。
そもそもワキ汗を治療するとはどういうこと?と疑問に感じている方もいると思います。
この記事では、実際に「切らないワキ汗治療器」を使っている先生にお話を伺いました。

監修・ご協力:藤本卓也 先生(こまちクリニック 院長 / 形成外科専門医)

1.ワキ汗は病院へ?

知ってほしい!ワキ汗はお医者さんに相談できるんです

編集部(以下、編集) 藤本先生、今日はよろしくお願いします。

藤本先生(以下、藤本) よろしくお願いします。

編集  早速ですが、先生はワキ汗に対してどのような治療をされてきたのでしょうか?

藤本  うーん、その前にぜひ伝えたいんですが、まずワキ汗に悩んでいる人に対して病院に来る患者さんが、すごく少ない んですよ。

編集  そうなんですか?

藤本  ええ。2012年の東京医科歯科大学の調査によれば、日本国内で推測される腋窩多汗症、つまりワキ汗が多くて悩んでいる人は531.9万人ぐらいいるはずなんです。でも、そのうち病院に行った人って実は6.2%しかいなくて。更に何か治療を受けた人は病院に行った人のうち、10%しかいないんです。

編集  かなり少なく感じますね。

藤本  ほとんどの方は、市販品を使用しているか、何もしていない。今は市販の制汗剤がすっごくたくさん出てるでしょう?だから、それで何とかしようとする人が大半なんですよね。

編集 なるほど…


※Fujimoto, T., Kawahara, K., & Yokozeki, H. Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan: from questionnaire analysis. The Journal of dermatology, 40(11), 886-890, 2013

藤本  若者のニキビもそうなんだけど、一昔前は、「ニキビは青春のシンボル」なんて言葉もあったくらいだし、ニキビくらいで病院なんて・・・という考えの人がすごく多かった。でも、実際には早めに適切な治療をしないとニキビ痕が残ってしまったり、正しくない方法で洗顔やスキンケアを行って悪化させてしまう可能性もあるから、皮膚科に行って正しい治療を受けるべきなんです。最近は少しずつ「ニキビは病院で治療する」っていう認識も広まってきたけど、ワキ汗に関してはまだまだだなぁと感じています。

編集  まずは、悩んでいたらお医者さんに相談する、という認識自体を広める必要がありますね 。

藤本  そうそう。ワキ汗って、汗そのものというよりも、汗ジミが目立ってしまったり、汗のにおいが気になったりして、それを人から指摘されたり、実際には指摘されなくても、そう思われているんじゃないか?という不安につながりやすい。

編集  芸能人など、汗ジミがクローズアップされたネット記事も見かけたことがありますし…。

藤本  ええ。そこをいじるか?って思ってしまいますけど…最近はスメハラ(スメルハラスメント(和製英語: smell harassment):臭いにより周囲を不快にさせる嫌がらせのこと)なんて言葉もあるみたいですしね。そういうわけで、ワキ汗をたくさんかいてしまうことで、日常生活に不都合が出てくる。医療業界ではそういうことをQOLが下がる、と言います。QOLというのはQuarity of Life、つまり生活の質のことですね。やっぱり皆、ハッピーに過ごしたいじゃないですか。

医師とカウンセリング

藤本先生のカウンセリングの様子。※画像はクリニックのホームページより

2.ワキ汗治療って大変?!

ワキ汗治療といえば、手術がメインだった?

藤本  話が逸れてしまいましたが、治療法についての質問でしたね。

編集  そうでしたね。藤本先生は、どんな治療を行ってこられたのですか?

藤本  僕は形成外科の出身だから、今まではワキ汗の治療といえばもっぱら手術でした。

編集  手術ときくと、やはり緊張してしまう方も多いと思いますが、どんな手術か詳しくお聞かせいただけますか?

藤本  例えば、剪除法(せんじょほう)という名前の手術があります。保険の適応になる手術で、まずワキに切れ込みを入れてワキの皮膚をひっくり返します。そうすると、エクリン腺、アポクリン腺という汗をつくるところがあるので、それをひたすらハサミでちょんちょん切り取っていく…という、けっこうやる方が大変な手術です(笑)。

編集  目で見て取っていくんですもんね。

藤本  そうです。はさみも手作業。この手術を取り漏らしなく完璧にやるのって、本当に大変なことなんです。

編集  想像しただけで目の奥が痛くなりそうですね…それで、ひっくり返した皮膚を元に戻して、縫うという流れですか?

藤本  そうなんですが、一回皮膚をはがしてしまってるので、はがした皮膚をきちんとくっつけないといけない。だから、縫って傷口を閉じたら、ワキの部分をしっかり圧迫して1~2週間くらい固定が必要で。やる方も大変だし、患者さんもかなり大変な手術だと僕は思います。

編集  こんな風になるんですね!これは患者さまも大変そうですね…※挿絵の参考画像をご参照ください。

 

藤本  合併症としてかなりの頻度で起こるのは、テープかぶれ。傷が開いてしまって、そこから化膿してしまうこともあります。あとは、切っているので傷が残ってしまうこともありますね。

編集  体に傷が残ってしまうのは、気にされる患者さまも多そうですね…

藤本  そう思います。そして、これは合併症ではないですが、エクリン腺の方がアポクリン腺より浅い所にあるので、皮膚を裏返した時、どうしてもエクリン腺の方が取りにくくて、取り残しが出てしまう可能性がある。手術をしても、効果があまりなかったと感じてしまうことになるんです。

編集  なるほど、それは何とも悲しい結果に…!こんな大変な手術をたくさんやってこられたんですね。純粋に、尊敬します。

藤本  ありがとうございます。形成外科医はほとんどの方が通る道だと思いますけどね(笑)。だから機器を使った「切らないワキ汗治療」を知ったときは、とても驚きました。

3.ワキ汗治療に救世主誕生?!

ワキ汗治療を機器で…って、どういうこと?

編集  機器でワキ汗治療、って、どういう感じなのでしょうか?

藤本  マイクロ波っていう、電磁波の一種を利用しています。マイクロ波って、あんまり聞き慣れないですよね。身近なもので言うと、電子レンジもマイクロ波を利用しています。電子レンジでものをあたためられる仕組みは知っていますか?

編集  恥ずかしながら、詳しくは…。

藤本  簡単に説明しますね。マイクロ波を温めたいものにあてると、温めたいものの分子が目に見えないくらいの速さで振動します。目には見えないけど、分子がおしくらまんじゅうをしてるわけです。それで摩擦熱を起こして、ものが温まる、という仕組みです。

編集  なるほど、その仕組みを使った機器なんですね。

藤本  ええ。電子レンジと全く同じというわけではないけれど、仕組みは一緒ですね。エクリン腺やアポクリン腺のあたりを狙ってチンして熱を加え、機能をストップさせよう、という機器 です。

編集  イメージできました!でも、皮膚の中をチンしてしまうなんて、聞いただけだとやけどしてしまいそうですけど…

藤本  やけどをしないように、皮膚を冷やす仕組みがついています。専門的な話は割愛するけれど、ダメージを与えたくないところは冷やして、狙ったところをチンする設計になっています。皮膚の表面は冷やして保護しているから、傷もできません。

 

編集  なるほど…痛くはないんですか?

藤本  麻酔の注射をしてから治療するので、ほぼ痛くないですよ。注射の痛みはあるけれど、治療中の痛みはほとんど無いです。ただ、痛みの感じ方はかなり個人差があるので、痛いのが苦手な人はまずお医者さんに相談してほしいですね。

編集  なら、少し安心ですね。実際の治療の流れもお聞かせいただけますか?

藤本  まずはワキに麻酔をして、治療する部位に印をつけ、その後マイクロ波をあてていきます。最後に保冷剤でワキを冷やして、終了です。時間は両ワキで一般的には1時間から1時間半くらいですね。照射数が多い場合は2時間から2時間半くらいかかることもあります。

治療に向き合う医師が思う、「切らないワキ汗治療器」のメリット

編集  では、先生が思う「切らないワキ汗治療器」の良いところはなんでしょうか?

藤本  まずはやっぱり、「切らないから傷ができない 」というところですね。いくら汗の悩みを解決するとはいえ、手術をして傷を作ってしまうのは心苦しかったので、傷ができないことが一番だと思います。

編集  やっぱり、そこは大切ですね。

藤本  ええ。そして、手術と比較すると、術後の患者さんの負担がすごく軽い のも良いですね。先ほど見せたとおり、手術のあとは1週間くらい固定が必要でしたけど、こちらは固定もいらないし、当日でもシャワー浴なら問題ありません。しばらくは激しい運動や飛行機に乗るのは避ける必要があるけど、日常生活にはほとんど影響がないと言えます。

編集  そちらも、患者目線では嬉しいポイントですね。

藤本  治療後も、基本的には通院の必要はなく、気になることがあれば来てください、という程度です。

編集  切らないワキ汗治療と言うと、注射による治療もあるようですが、違いは何でしょう?

藤本  そうですね、ボツリヌストキシン製剤をワキに注射する方法もあります。こちらは汗を出す指令を一時的にストップすることで汗を抑える治療ですね。効果が続く期間には個人差がありますが、いずれにせよ注射の効果は一時的なので、定期的に注射をする必要があります。

編集  なるほど。機器によるワキ汗治療は1回でいいんですか?

藤本  基本的には1回ですね。生肉をチンして火を通したら、生肉に戻ることはないでしょう?ただ、症状の程度や効果の出方も個人差があるので、1回治療をしたけれどまだ気になる、という場合には2回目の治療をすることもあります。

編集  ではまとめると、定期的に通院できる場合は注射でも治療は可能で、それが難しい人や、私のようなめんどくさがり屋は、機器治療の方が楽かもしれないですね(笑)。

藤本  そうですね(笑)。

4.まとめ

藤本  最初にお話ししましたが、やっぱりまだ「ワキ汗」「汗のにおい」で病院に行こう、という認識が広まっていないのが現状です。市販品でも対処しきれなかったり、日常生活に不便を感じている場合は、怖がらずに医師に相談してみて欲しい ですね。

編集  まずは、患者さんの意識改革が必要ですね。

藤本  そうですね。患者さんによってどの治療が適切か、どんな治療が向いているかも変わってきます。今日お話ししたように、手術や切らないワキ汗治療器、注射など、様々な選択肢があるので、まずは1度受診して、自分に合った治療を選択するのが良いと思います。

編集  先生、今日は貴重なお話を聞かせていただいて、ありがとうございました!

藤本  こちらこそ、ありがとうございました。

今回は、実際に治療を行う先生からお話を伺いました。先生のおっしゃるように、お悩みの方は、是非一度医療機関に相談してみてください。

ワキ汗に関する情報は、こちらのページで紹介しています。
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